「ホームカミングデーでチケットあるから観に行かない?」
何気ない同級生の誘いで、観戦しに行った母校のアメフトの試合。
もとよりさほど愛校心がなく、卒業生の集いにはあまり参加しないのですが、
以前にも述べた通り、このスポーツとなると全く別で、
二つ返事で川崎球場まで足を運ぶことになったのです。
ここのところ、「夢中になれるもの」を探して、迷走している自分にとって、
カレッジスポーツを観るのは何かの機会になるのではないかという思いもありました。
プロスポーツ選手ではない学生が、4年間という短い期間を懸けて、
ひとつのことに集中してストイックになる姿は、観るものを感動させます。
まして攻守が異なる部隊で、分業スポーツと言われるこのスポーツは、
各班に専門コーチがいて、その監督下で幹部が下級生を教え、
映像撮影などの実務万般を引き受けるスタッフも含め、
200名の部員やチームドクター、OBが総力をかけて戦うスポーツであり、
組織や人材育成を考察するにあたっても実に見ごたえのあるスポーツなのです。
収容人数4,000人弱の「富士通スタジアム川崎」のスタンドに足を踏み入れると、
日本のカレッジスポーツには適切な規模感であることを実感します。
川崎フロンターレのオフィシャルスポンサーであり、
多くの企業が企業スポーツから撤退する時代に、
陸上、バスケ、アメフトの各部を有する富士通という会社の懐の深さと、
ホームタウンを大切にする企業の姿勢を感じながら、視線はグランドへ。
他の選手とは異なる次元の体躯とウォームアップの動きのスター選手や
細かな雑用をこなしタイムキーピングするマネージャー、
自らのパートのみならず、チーム全体に目を配る幹部の動きに目を奪われます。
いざ、決戦。
一進一退の攻防、モメンタムが行き来する攻防は、
3つの大きなターニングポイントが機会となり、雌雄を決しました。
勝敗という大きな結果、それを省みる思考のプロセスはスポーツならではの醍醐味。
大きく感じたことは、土俵にあがるには「タレント」が必要だということです。
「タレント」とは「価値を生み出す能力をもったヒト」で、
単なるプロフェッショナルやスペシャリストとは異なります。
タスクを100%確実にこなすことや特定分野に秀でているのみならず、
未知の分野に新しい価値をつくる創造的な動きができるヒトです。
ラインが押し切れなくても3人のタックラーをひきずって4ydゲインするような、
プレーブックを超越する創造的なプレーができる選手です。例えるなら。
タレントアクイジション(採用)の重要性は各国で言われ始めて久しいのですが、
なるほどプロフェッショナルやスペシャリストが束になっても
既知の部分を遂行するだけではなく、新たな価値を創造することができなければ、
「勝負」するのは、難しいことを実感させられます。
もちろんタレントだけでは組織は成り立ちません。
プロフェッショナルやスペシャリスト、ワーカーが自らの役割を認識し、
自律することで、はじめてタレントが生きてきます。
プレーアクションパスもレシーバーがとってこそ、
カバーチームがよいフィールドポジションを確保してからこそ勝機が訪れます。
適材適所を実行し、それぞれの役割に誇りをもち、
「タレントを支えて組織を成長させるために何をすべきか。」を思考すること。
この文化を育むことが、勝てる組織を形成する条件なのだと感じさせられたのでした。
スポーツの世界ではもちろん、高度に知識集約的な情報を生み出す事業分野では尚更、
今後もタレントマネジメント、タレント育成は、より重要となるでしょう。
まわりを見渡してみて、強いチーム、持続する企業はこの点を理解しているはずです。
ディテールで勝負が決まった試合に敗退した母校の学生たちの姿から、
大切なことを学んだホームカミングデー。
純粋に熱くさせられ、応援のメガフォンは第3クオーターでちぎれていました。
部外者である僕を誘ってくれた友人に感謝です。「チケットありがとう。」